【役立つ知識】なぜ戦争(地政学リスク)が起きると、銅や非鉄金属の相場が激しく動くのか?実務に役立つ裏側を徹底解説!
更新日:2026年6月20日 | lets-copper.com
いつも当ブログ「レッツカッパー!」をご覧いただきありがとうございます。
日々、銅スクラップや電線、雑線の仕入れ・販売に携わっていると、「中東で緊迫化」「ウクライナで新たな展開」「米イラン和平合意」といったニュースの直後に、LME銅相場や為替TTSが急騰・急落する場面を何度も目にするかと思います。
現場の実務者としては「なぜ地球の裏側での紛争が、今ここにある銅の買取り価格に直結するのか?」と疑問に思うこともありますよね。本日は、週末の特別企画として『なぜ戦争が起きると相場が動くのか』というメカニズムを、専門用語をできる限り使わずに3つのポイントで分かりやすく解説します!
1. 「有事のドル買い」による通貨のシーソーゲーム
最も直接的な原因は、通貨(為替)の動きです。世界で戦争や大規模な軍事紛争が始まると、投資家たちは「自分のお金を守らなければならない」という強い防衛心理を働かせます。
この時、世界で最も安全で信用されている資産である「米ドル(アメリカの通貨)」や「金(ゴールド)」へ、世界中から凄まじい勢いで資金が避難します。これが有名な「有事のドル買い」です。
💡 【重要】ドル建てコモディティの仕組み
LME(ロンドン金属取引所)で取引される銅やアルミなどのベースメタルは、すべて「米ドル建て」で価格が表示されます。
そのため、戦争によって米ドルの価値が急上昇する(ドル高になる)と、相対的に「銅の価値がドルに対して安く見える」ため、LME銅価格は引き下げられる(下落する)というシーソーの関係にあります。先日の相場急落も、銅そのものの価値が落ちたのではなく、この「有事のドル独歩高」が直接の引き金でした。
2. サプライチェーン(供給・物流網)の物理的な分断懸念
次に、純粋な「現物の供給リスク(ファンダメンタルズ)」です。ベースメタルは天然の鉱石を製錬して製造されるため、生産地や輸送ルートに紛争が重なると、物理的に現物が流通しなくなります。
- 鉱山の操業停止: 紛争地域およびその周辺国では、電力供給の途絶や労働者確保の困難、さらには鉱山周辺の治安悪化により、鉱石の採掘・出荷が完全にストップするリスクが高まります。
- 輸送ルートの麻痺(海路の遮断): たとえば中東で紛争が起きると、世界の原油や物資の要所である「ホルムズ海峡」や「紅海(スエズ運河)」をタンカーや貨物船が安全に航行できなくなります。遠回りの迂回ルート(アフリカの喜望峰回りなど)を余儀なくされることで、海上運賃が激しく暴落・高騰し、現物が手元に届くまでの遅延が発生します。
「現物が手に入らないかもしれない」という恐怖から、世界中の電力メーカーや自動車メーカーが一斉に取引所(LMEなど)に買い注文を入れて地金を確保しようとするため、価格が暴騰するメカニズムです。
3. 原油(エネルギー)コストの暴騰に伴う「製造コストの上昇」
非鉄金属、特にアルミニウムやニッケル、亜鉛などを地金として精錬するには、莫大な電気エネルギー(電力)を消費します。そのため、アルミなどは「電気の缶詰」と称されるほどです。
戦争、特にエネルギー大国が関与する紛争が起きると、原油(WTI)や天然ガスなどの燃料価格が一気に暴騰します。この火力発電燃料の高騰は、製錬メーカー各社の「電気代(精錬エネルギーコスト)」にそのまま直撃します。
「生産コスト(原価)が高すぎて、採算が合わないから工場の稼働を落とさざるを得ない」と精錬メーカーが減産に乗り出すため、市場全体の流通量が減り、価格が上昇する圧力(コストプッシュ・インフレ)が生まれます。
🕊️ 【実例解説】米イラン和平合意による「急上昇」はなぜ起きたのか?
先週、市場を震撼させたのが「米イラン和平合意」という歴史的ニュースでした。これは上記で説明した「戦争リスク」の逆回転が起きた絶好のケースです。
- ドル高の終焉:和平合意により有事の緊張が解け、安全資産として買われていた「米ドル」から一斉に資金が抜けました(ドル安への転換)。
- ショートカバー(売り買い戻し):緊張緩和により「物流リスクの解消」「開発需要の再開」を見越した買い手たちが、これまで暴落を予想して売っていた空売りポジションを急いで買い戻した(ショートカバー)ため、価格が跳ね上がりました。
- 国内建値への波及:結果として、日本の電気銅計算値は数日で**2,240円から2,290円へ急上昇**し、建値は40円引き上げへと急騰しました。
【実務に活かす結論】不確実な世の中で、プロはどう立ち回るべきか?
地政学的な「戦争や和平」のニュースは、私たちの意思とは関係なく突発的にやってきます。これを予測して「相場を張る(長期で在庫を抱える)」ことは、投資のプロでも極めて困難な賭けとなります。
スクラップや電線、雑線の現場実務を担う私たちが取るべき唯一最大の正解は、「相場環境が不確実であること、為替161円台という介入警戒期であることを大前提とし、仕入れた現物はヤードにストックせずに、即日で転売・出荷完了(ポジションをスクエア化)させる超高速回転を貫き通すこと」です。
ニュースに一喜一憂せず、目の前にある確実な買い取りマージンを手堅く抜き続ける姿勢こそが、いかなる時代の荒波でも勝ち残る最大の防衛策となります。